誰でも運転免許証のもらえた国・ベルギー

ずいぶん前の話になるが、まだ私がベルギーに来たばかりで、この国で運転するのに頭を悩ませていた頃、あるホームパーティで知り合ったイギリス人夫婦から、こんな話を聞いた事がある。それは、ベルギーという国は、実はかなり最近まで、誰でも運転免許証がもらえた、という話である。

なぜこんな話になったかというと、日本でペーパードライバーだった私が、突如、リアルドライバーとして毎日運転を強いられるようになり、日本でほとんど運転したことがなかったことも手伝って、ただまっすぐ走れば良いはずの高速道路でさえ、迷惑をかけるような運転をしている気がして、あの頃は慣れた今と違って一番右の遅いレーンを一番のろまなトラックの後ろをゆっくり慎重に運転していた頃だった。ベルギーで運転するのは、怖い。だって日本と違って直進車ではなく、右から突然飛び出てくる車が優先されるんだもの。

そんな話をしていると、かのイギリス人夫婦が、そういえば、昔は赤いナンバープレート(ベルギーの車についている)を見ると、みんな避けて通ったものよね。だってベルギー人ってば、運転の仕方を知らない人たちが、運転しているんだもの。

え?と聞き返すと、知らなかったの?ベルギーで、きちんとした運転免許制度ができたのって、1960年くらいだったと思うわよ。それより前って、申請すれば、車の運転なんてした事もない人も、誰でも運転免許証がもらえたの。まあ、ヨーロッパ広しといえども、そんな適当な国、ベルギーだけだったから、他の国の人たちは、ベルギーの赤いナンバープレートを見ると、危ないって思ってたわよ。今だって、その頃運転免許を取った人は、ある意味自己流運転を続けているわけだから、あの古いナンバープレートをつけて運転しているお年寄りは、要注意よね。

ホームパーティでアルコールも入った会話だったから、その時は半信半疑で確かめる事もせず、話半分に聞いていたのだが、この間同じ話題になり、ベルギー人の同僚とその話をする機会があった。すると、確かに彼の祖母は、ハンドルも握った事がないのに申請しただけで簡単に運転免許がもらえたと言う。にわかには信じがたいが、知る人ぞ知る、びっくり仰天話である。

今でこそシステムが変わり、昔のピンクの紙の永久運転免許証は姿を消し、代わりにチップの入った5年ごとに更新する必要のあるプラスティック製の運転免許証に変わったのだが。

その昔、ちょっと考えられないような事まで、おおらか過ぎたこの国、でも、今でも変わらず、寛大なところの多い御国柄。困る事も多いけど、日本人にはあり得ない、このいい加減さが今では結構はまっていたりするのである。

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