小便小僧 Manneken-Pis

ブリュッセルで世界的に有名な彫像といえば小便小僧、その名もジュリアン君(Petit Julien)でしょう。

その背後にある噂や寓話はあげたらきりがないほど…。そのひとつ、敵軍がブリュッセルを包囲し、城壁を落とそうと火薬の導火線に火をつけたところ、ブラバン公の王子がおしっこをかけて消し、味方を勝利に導いたというのは人気のある話ですね。

ジュリアン君の歴史

マネキンピスは身長58センチの小さな銅像です。世界一有名な銅像でありながら「世界三大ガッカリ名所」の筆頭格でもあります。(他はシンガポールのマーライオンとコペンハーゲンの人魚姫)

しかし、豊かな歴史に彩られたジュリアン君(フランス語ではLe petit Julienという)が、本当にがっかりかどうか、皆さんもその歴史を知って、そして実際に訪れて確かめてください。

ジュリアン君のもともとの機能は、街角の噴水です。1388年にはすでに石で作られた像が設置されていたようです。元祖ジュリアン君は残っていませんが、1452年にマネキンピスの名前がアーカイブに登場しはじめます。立派な(しかし小さい)銅像として作り直されたのは1619年頃のこと。ブリュッセル市が彫刻家ジェローム・デュケノワ Jérôme Duquesnoy (1570-1641)に依頼したものでした。

1695年、フランス軍によりブリュッセルが砲撃を受けた際にはジュリアン君は被害を受けないように、別の場所に隠され、勝利後に元の台座に戻されました。そのとき彼の頭上にはこの聖句が掲げられました。

In petra exaltavit me, et nunc exaltavi caput meum super inimicos meos
神が私を石の台座に置かれた。そして今、私の頭は敵の上にある。

ジュリアン君が、ブリュッセルの象徴として大いに地元民の愛を受けている様子が分かります。もはや銅像の域を超えた存在。そこで、1698年、当時スペイン領ネーデルラント総督だったマクシミリアン2世エマヌエルから衣装をプレゼントされます。これが彼のはじめての衣装でした。

しかし、人気者であるがゆえにジュリアン君は数々の受難にさらされてきました。1745年、イギリスの兵士たちが銅像を奪い去ります。しかし、ヒェラーツベルヒェン Geraardsbergen という町の住民が協力してくれたおかげで取り返すことができました。この町には感謝の印としてジュリアン君のレプリカが贈呈されました。

さらに2年後の1747年、今度はルイ15世のフランス軍兵士たちが奪いますが、これによりブリュッセルに暴動の気運が高まります。事態の収拾をはかるため、なんとジュリアン君に金刺繍で飾られた騎士の衣装が贈られ、帯剣が許可され、さらに勲章まで授けられたのです。

1817年にリカスという男に盗まれ、今回はバラバラに壊されて捨てられてしまいました。犯人のリカスはグランプラスで拘束された状態で1時間見せしめにされ、終身強制労働という重罰を受けます。壊されたジュリアン君はくっつけられ、このときレプリカ用の型を取られます。1963年にも盗難にあい、これはすぐにアントワープで見つかりました。さらに1965年には破壊され、くるぶしまでの足しか残りませんでした。

・・・と、こういうわけで、ジュリアン君が1619年に作られた当初の状態がどこまで残っているかは相当の疑問が残りますが、それでも「オリジナル」と言われる像は、グランプラスの「王の家」に保管されています。

世界一の衣装持ち!?

世界中から衣装が贈られ、記念日などにはそれに見合った装いを見せてくれます。ブリュッセルのファッショニスタのワードローブは、以前はグランプラスの「王の家」に保管されていましたが、最近は特別な衣装部屋ができたようです。こちら。住所はRue du Chêne 19, 1000 Bruxellesです。(火~日曜、10~17時)


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