『フランダースの犬』ネロとパトラッシュ

日本で大人気のアニメ作品『フランダースの犬』の舞台となったアントワープとホーボーケンで、ネロとパトラッシュのモニュメントを訪ねてみよう。

1872年に原作となる小説『A Dog of Flanders』が出版された。イギリスの女流作家ウィーダによる。これが日本で翻訳され、アニメ作品化されたおかげで、物語が有名になったと言えるだろう。しかし、実際にアントワープに行ってみると、、、

中国人がスポンサーの新しいモニュメント!?

現在、アントワープ大聖堂のすぐ脇にある広場にネロとパトラッシュのモニュメントが立っている、というより、、、寝転がっている。2016年5月に完成したこの像は、4万ユーロ(約480万円)かけて作られた。中国の宝飾品企業がスポンサーである。ご覧の通りだが、ネロとパトラッシュが安らかな眠りについた様子で、掛け布団は地面から盛り上がった石畳というデザインである。これを「斬新」と表現するか、「悪ふざけ」と批判するのか、微妙なところである。恐らく日本人が見ると「ネロとパトラッシュを踏んづけるではないか」と、ちょっと嫌な気持ちになるかもしれない。

実は同じ場所に、2003年から日本企業がスポンサーしたモニュメントがあった。(写真上)こちらは大真面目でユーモアのかけらもない。実際のところ観光客の休憩ベンチに成り下がり、損傷も目立つようになったので撤去された。これが愉快な中国版モニュメントに取って代わられたのだ。中国の政治経済の興隆、日本の地位低下を目の当たりにするようで、やるせない。しかし、アイデア不足であった、国際市場に対するデザイン勝負に負けた、お金を出さなかった、アントワープ市に相談されなかった(されたとしても対策をとらなかった)と、敗因を分析するのも将来のためになるだろう。

ホーボーケン村の銅像を詣でる

中国版ネロとパトラッシュを見て微妙な気持ちになった方には、お時間が許せばアントワープ郊外にあるホーボーケン村にある銅像を参拝するというオプションをおすすめしたい。アントワープの市内からはトラム一本で行ける。(住所:Kapelstraat 3, 2660 Hoboken/トラム4番線ホーボーケン方面Hoboken Kioskplaats停留所下車260メートル)

こちらの像は1985年に設置された。もちろん日本から大勢のアニメ作品ファンが押し寄せた結果である。

寒村の貧しい少年とその忠犬の姿が、リアルなタッチで表現されていて、個人的にはこちらのほうが好ましい。中国版の奇抜さとは無関係である。ホーボーケン村の村長には、この像が別のへんてこりんなものに取って代わられることがないよう、今からクギを刺しておかねば・・・。

地元の人が知らない!?

『フランダースの犬』の物語は、残念ながらベルギーでは認知度が低い。多くの日本人観光客がアントワープやホーボーケンに押し寄せて、なんとなく地元の人たちも「ああ、日本にそういう作品があるのね」と理解した程度である。

ただ、ホーボーケンに銅像が建てられた同じ年に、ベルギーの漫画シリーズ『ススカとウィスカ』に、『フランダースの犬』の時代と物語にタイムスリップする話が登場した。これがベルギー人が『フランダースの犬』を認知した時代のピークかもしれない。

ネロとパトラッシュの悲劇

『フランダースの犬』最終回では、奇跡的に扉の開いていた大聖堂で、ルーベンスの『昇架』『降架』の名作を見ることができる。普段は閉まっていて、お金を払わないと見せてもらえないが、そのときだけカーテンが開いていたのだ。

とうとう僕は見たんだ。なんて素晴らしいだろう。マリア様、ありがとうございます。これだけで、僕はもうなんにも要りません」と言って床に倒れ込むネロ。

その後を追ってきたパトラッシュにネロが語りかける。

パトラッシュ、お前、僕を探して来てくれたんだね。分かったよ。お前はいつまでも僕と一緒だって、そう言ってくれているんだね。ありがとう。パトラッシュ、僕は見たんだよ。一番見たかったルーベンスの2枚の絵を。だから、僕は今すごく幸せなんだよ。パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ。パトラッシュ」。

大聖堂の天井から天使が現れ、ネロとパトラッシュをマリア様の待つ天界に連れていく…。

リンク:アントワープ大聖堂についてはこちら。

第一話は日本アニメーションさんによりYoutubeで公開されている。

©Nippon Animation ©Suske en Wiske ©Visit Antwerp