EU司法裁判所が「電子書籍への軽減VAT税率はEU法違反」と判決

3月5日、EU司法裁判所はフランスとルクセンブルクが電子書籍に適用していたVATの軽減税率をEU法違反と判決した。「電子書籍はモノかサービスか?」の論争に一つの結論が出された。

ヨーロッパでは日本の消費税にあたるVAT(付加価値税)は20%前後に設定されているが、食料品や水道水、医薬品、そして書籍雑誌などに軽減税率が適用されている。

紙の書籍と同様に、電子書籍に関しても、フランスは5.5%、ルクセンブルクは3%と、2012年1月1日から軽減税率を適用してきた。「電子書籍は紙媒体の書籍と実質的に同じものである」というのがこの2国の基本的スタンスといえる。しかし、それ以外の加盟国では「電子書籍は物理的な土台を持たないサービスである」として他の商品やサービスと同様の20%前後のVATがつけられている。

そもそもEU加盟国は、限られた品目のリストを設け、対象の品目については軽減税率を適用することを許されている。電子書籍をダウンロードすることは「電子的に提供されるサービス」と認識されており、このリストには入っていない。したがって軽減税率を適用することはできない。ちなみにリストはVAT指令のAnnex IIIに掲載されており、そのなかで書籍への軽減税率適用は「物理的な媒体による本の提供」に対して、と限定的に記述されている。

欧州委員会のアーカイブで確認すると、2012年7月3日のプレスリリースで、フランスとルクセンブルクで適用されている電子書籍のVAT率がEU法に適合していない可能性があると疑義を呈している。欧州委員会はEU法の厳正な適用を求めてきたが、2国はスタンスを変えず、EU司法裁判所に舞台を移して議論は3年続けられた。

今回、法廷が出した結論は「たしかに電子書籍を読むためにはパソコンやブックリーダーなどの物理的な装置を必要とするが、電子書籍の提供にそのような物体は含まれていない。したがってAnnex IIIのリストに含まれるものではない」というものだ。また欧州委員会は、VAT指令のなかで軽減税率も含めてすべてのVAT税率は原則として5%以下にすることを禁じると定められているにも関わらず、ルクセンブルクが3%という超軽減税率を適用したことを批難している。

2011年12月の時点で、欧州委員会自体も従来の紙の本と電子書籍の税率を同じものにする方向性で動くことは可能か、議論を開始している。しなしながら、EU指令は各国の税法の上に存在するものである。指令のリストの記述を無視して、勝手に自国だけVATを軽減していいわけではない。もし電子書籍への課税を軽減したければ、EU指令自体を書き換えてから、という段階を踏む必要がある。

これまでの3年間の軽減税率適用について罰則が課されるかどうかは現時点ではっきりしないが、この判決を受けて2国はすみやかに税制を変更する義務が課せられた。さらに独自の税制を強行する場合は、より強制力のある制裁が行使される可能性も高まる。

実際のところ、フランス、ルクセンブルクの独走により、市場には大きなひずみが生まれている。この2国以外では通常の税率(20%前後)が適用されているからだ。2014年末まで購入者の居住地ではなく、サービスの提供地で税率が決まっていたことから、フランスとルクセンブルク以外のサービス提供業者は不当な競争にさらされていた。電子の世界に実質的な国境はない。価格が低い提供者のサービスを利用したいと考えるのは消費者心理としては当然だ。

文化の促進者か、軽減税率の不正利用者か、フランスとルクセンブルクの真価が問われるのはEU全体の税制改正という次の章のようだ。

8.mar.2015

 参照:

http://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2015-03/cp150030en.pdf

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-12-740_en.htm

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/108.htm

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