性科学先進国ベルギーで「愛」を考える

今の社会にはカップル間の愛し方、関係の持ち方を学ぶ場所がありません。学校で習うのも避妊方法や男女の身体知識などに限られます。ですが幸せなカップル生活を送るためにそれだけでは不十分なことは明らかです。性科学先進国ベルギーで「愛」について考えてみませんか?(臨床心理士・川瀬まり)

避けて通れない「夫婦の性」の問題

私の本職はpsychologue(臨床心理士)。ブリュッセルのメディカルセンターで相談室を開いています。 日本にいるときのように気軽にストレスを発散しにくいベルギーで、みなさんが気軽にお話しに来れる場所を目指しています。

私は一時期ベルギーのルーヴァン・カトリック大学でセクソロジー(sexologie)の勉強をしました。日本語で言えば「性科学」。

これまでのお仕事を通して、夫婦やカップルについて考えさせられることが何度もありました。個々に問題や悩みをお持ちの場合も、その背後に夫婦の問題があったり、問題とまでは行かなくても夫婦間がしっくりいっていない、夫婦のどちらかが不満を抱えていることがよくあるように感じました。

そこで、夫婦の満足感が高まれば、個々の抱えている問題も解決しやすくなるにちがいない、と思うようになりました。夫婦で異国に住めば、良くも悪くも日本にいるときより関係が密になります。その状況を生かすも殺すも自分たちしだい。だったら少しでも生かしてほしい。

そして夫婦には性のテーマが不可避です。これが私がセクソロジーを勉強するに至った経緯です。

まだまだ敷居が高い?

アメリカほどではないにしろ、ベルギーでは日本より気軽に「心の専門家」のもとを訪れます。しかし、「性の専門家」となると、まだためらう人が多いようです。臨床心理士はプシコローグ・クリニシャン(psychologue clinicien)と呼ばれ、性の臨床に携わる専門家はセクソローグ・クリニシャン(sexologue clinicien)と呼ばれますが、友人にサラッと「今からセクソローグの所へ行ってくるね!」とは、言いにくい。資格も臨床心理士のように国から保護されているわけではありません。まだまだこれからの分野です。

心理学は今では学問の域を超えて、実際に皆さんの心の健康に役立ちつつあるものの、性科学は依然耳慣れないものではないでしょうか。研究の域から離れきれていない気がします。他方で、セックス産業は盛んですが・・・。

ですが少しづつ、性科学を人々の生活に役立てようとする専門家が増えています。

日本でも一部の医師などの活動を耳にしますが、今回ご紹介する「AAAh」は、それにグループ規模で取り組んでいるのが特徴です。

愛について考えるグループ L'Académie des Arts de l'Amour

AAAhは「L’amour est un art」(愛はアート)というコンセプトのもと、個人やカップルの性愛の充実を目指し活動している会です。主要メンバーには、ルーヴァン・カトリック大学教授のパスカル・ド・スッター(Pascal De Sutter)や、建築家でありセクソローグであるという珍しい経歴の持ち主ジュリー・ファン・ロンパイ(Julie Van Rompaey)がいます。(他にも研究者が何人かおり、彼らはテレビにもよく登場します)会員はベルギーとフランス在住の臨床心理士、セクソローグ、医師、ソーシャルワーカーなど健康に関わる専門家ばかりです。  

この会の特徴は、性知識やより良く愛し合う方法を、広くわかりやすい形で一般に伝えようとしている点です。またそこを通して、カップルのより幸せな関係や個人の性的開花などに貢献していこうとしている点です。こう言った活動はベルギーでも新しいものです。

まだ試行錯誤中ではありますが、様々なテーマでアトリエや講演会を開いています。専門家のための研修や、面白いところでは男女の性をテーマにした演劇も企画しています。これまでに人気のあったアトリエは「フェラチオの方法」「カップルのためのタントラマッサージ」「長く求めあい愛しあうために」などです。複数のカップルが週末お城に集って、ロマンティックな雰囲気の中で性愛について学び、同時に愛を深め合う《ウイークエンド・カップル》も好評を得ています。

Lady Salon 2016 レポート

2016年3月5、6日にブリュッセルのTour & TaxisにてLady Salonが開催されました。

グルメ、ファッション、コスメ、リラクゼーションから性生活まで、女性のためのスタンドが並びました。

AAAhも今年初めて参加しました。活動の各種パンフレットを並べたスタンドの他、「café sexuel」「atelier « jeux des amoureux »」を企画しました。

「café sexuel」は、性に関するテーマで自由に話し合える場があまりないので、お茶を飲みながら性生活や性の問題について自由に意見交換できる場所を提供しようという考えで企画されました。

「atelier « jeux des amoureux »」は日本語に訳すと「恋人同士の遊び」。砂時計やコインなど身近にあるものでも、想像力次第で十分に恋人たちの遊び道具になる。エロティックな楽しみはいくらでもある。子供が遊ぶように、恋人同士が想像力を高めて楽しもうとすることが大切。 そういった話で盛り上がります。

アトリエでは少し練習もしました。例えばアルファベットのAを出して、Aから始まる好きな体の部分、エロティックな気分になる場所、愛を交わしたい場所、を書き出したり。参加した方々も最初は苦心していましたが、2つ目、3つ目のアルファベットを考えるうちに、徐々に楽しみながら想像できるようになっていたように思います。普段日々の生活に追われていると、想像力、ファンタジーなどは忘れてしまいがちです。

会場の雰囲気

向かいはセックストイやセクシー下着を売っているスタンド。お姉さんに商品の説明を受けたり、私も少し勉強(?)しました。溶けてきた液を体に垂らしてマッサージに使えるキャンドルや、口に入れてもOKなジェル、それからなんと日本のTengaもありました(お買い得価格で6ユーロ)。 

バルカン半島で一つ一つ手作りでできた靴、健康食品、自然派化粧品、かわいいスイーツのスタンド。AAAhをはじめとする幾つかのアトリエ、料理の実演、ファッションショーなどもありました。

来場者は様々な年代の女性たち。なかには男性も何人かいて、こうしたイベントは男性にとっても女性の興味を知るいいきっかけになる気がします。

執筆2016年3月

 

臨床心理士 川瀬まり Mari Kawase
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