賃貸契約1 エタ・デ・リュー état des lieux

この連載は普段の生活でご自身の身に起こりうるかもしれない事柄を、法的な側面から情報提供することを目的にしております。いくつかのトピックが扱われますが、最初に家アパートの賃貸契約についてご説明したいと思います。

さて、賃貸契約はベルギーにお住まいの皆さんが当事者ですよね。しかし、いろいろな種類の賃貸契約が存在し、かつ金銭的条件や権利や義務ににいて細かいところまで分かっていますか? 今回はフランス語で「エタ・デ・リュー」état des lieux、オランダ語でプラーツベスフレイヴィング plaatsbeschrijvingと呼ばれるものにフォーカスを当ててみましょう。

 

まず、あなたが賃貸物件を探しているというシチュエーション設定です。気に入った物件の広告を見つけました。大家さんに連絡をしてアパートを下見に来たところです。キレイな印象ですし、ここを借りたいと思います。大家さんは賃貸契約にサインすること以外に、エタ・デ・リューの書類を作らないといけないと言い出します。

 

エタ・デ・リューとはなんでしょうか?

これは借り手がそのアパートに住みはじめる時点で、その物件の状態がどうだったかを確認する書類です。そして賃貸契約の終了時に、大家さんがその書類と照らし合わせて、物件に何らかのダメージがなかったかどうかを確認するためのものです。賃貸契約を結ぶ際、もしくは借り手が物件に住みはじめてから1カ月以内に制作されます。

 

エタ・デ・リューは、強制でしょうか?

それに対する答えは実にベルギーならでは。つまりYES & NO。強制でもあり、強制でもない。

YESであるのは、法律の改正後、エタ・デ・リューは理論的に強制であり、2007年5月18日以降に交わされた賃貸契約については必ず作成しなければならないからです。(ベルギー民法§1 article 1730を参照)

同時にNOであるのは、この法令を破ったからといってペナルティーがあるわけではないのです。エタ・デ・リューが書かれなかったとしても、誰も責任を問われません。

 

どのように作成するの?

一番簡単な方法は、大家さんと一緒にエタ・デ・リューを書くことです。部屋の一つ一つを一緒にまわって、見たままの状態を記述していくのです。代理人が行ってもいいことになっています。

もし大家さんと意見が違ったら、専門家に頼ることになりますが、現実に目の前にある部屋の状態についてすら合意できないなら、そんな大家さんと今後お付き合いしていくことは考え直したほうがいいでしょう。

きっちりと正確に記述してくれるだれか信頼できる専門家がいるなら、お互い合意のうえでプロに依頼するという選択肢もあります。通常、こうした専門家の費用は大家さんと借り手で半分づつ折半しますが、負担割合の変更を要求することも可能です。

 

作成にあたっての注意は?

ルール1

何が書かれているか理解できるようにします。よく分からないことを、そのまま鵜呑みにしてはいけません。勘違いを防ぐため、また最悪のケースの場合、騙されるようなことがないようにしましょう。

ルール2

何か問題があれば、必ず記述するようにします。エタ・デ・リュー作成時には、借り手は欠陥や不具合についてすべて書かれているかどうか注意します。もし書類の中に欠陥が見当たらなければ、それは賃貸期間に発生したと見なされ、借り手が賠償金を払わなければならないことになります。

さらに、詳細な記述があれば、その物件が必要とする補修について大家さんに要求することができます。そうすれば大家さんもそれに対応せざるをえないという具合になります。次回以降のコラムで紹介しますが、実際に大家さんは修理の必要がない良好な状態の物件を提供する義務があるのです。

 

ペナルティーがないのに、なぜ大家さんはエタ・デ・リューを作成したがるの?

本当のところを言うと、この書類は大家さんサイドにとって非常に重要なのです。

もしエタ・デ・リューがなければ、ベルギーの法律上、賃貸契約の最初から終了まで、物件の状態はずっと同じであったと見なすことになっています。(ベルギー民法§1 article 1731を参照)

つまり、当然のことですが、これは借り手にとっては非常に都合がいいのです。もし、書類が存在しなければ、借り手は「この物件は最初から最後までこの状態でした」とだけ言って去ればいいのです。

法律によると、大家さんに反論がある場合、「いや、アパートをこの人に貸す前はこうでした」という状態を証明しなければならないのです。しかし、エタ・デ・リューを作成していなければ、そういった証明は非常に困難です。

逆に考えると、借り手に都合のいい法律なので、大家さんに「エタ・デ・リューを作成しましょう」とプッシュする必要は全くありません。大家さんが忘れていたりして要求しなければ、借り手は受け身にまわって作らないでおくほうがいいのです。ないに越したことはないですし、どちらにせよ書類がないからといって罰則規定があるわけでもありません。

 

賃貸契約の終了時に何が起こる?

契約が終わりアパートを退去するに際して、エタ・デ・リューの記述と物件の現状が比較されます。

これは借り手のあなた(または代理人)と大家さんの間でなされます。しかし、比較検証の作業は多くの場合、専門家の助けで行われます。

アパートにダメージがある場合、大家さんは金銭的な賠償を借り手に要求することができます。しかしながら、これは普通に使っている間に生じるものや時間の経過による劣化については要求されません。つまり、ペイントの色が薄くなっているというのは大丈夫ですが、タイルが一枚なくなっているというのはアウトです。

また、借り手の過失ではなくダメージが発生した場合(例:地震が起こり屋根のタイルが落ちた)、それを証明できれば支払い義務はありません。もし両者の間で意見の相違が生じれば、専門家を呼んでダメージの査定と金額の提示を依頼することができます。その査定に同意できない場合は、別に無理に受け入れる必要はありませんし、調停所 Justice de paix に持ち込むことができます。(ただし、契約書に「専門家の判断に従う」と記載されていなければですが)

さらに言えば、もし契約書に「専門家の判断に従う」と記載があったとしても、例えばタイル一枚1000ユーロなど、大家さんや専門家が明らかに権利の濫用をしているとなれば不服を申し立てることはできます。

 

それでは、エタ・デ・リューについて、覚えておくべき要点をおさらいしましょう。

・もし大家さんが率先してエタ・デ・リューを作成しようとしなければ、わざわざプッシュして作らなくてもよい。

・大家さんがエタ・デ・リューを作ることを求めた場合、すべての欠陥について書かれているか注意深くしておく。「あいまいにしておいたほうがいい」と考えてはいけません。借り手としてはできるだけ具体的に書かれているほうが有利。

 

Jean-Ferdinand Puyraimond
Chantal Bastide
Lawyers admitted to the Brussels Bar
Gutmer & Puyraimond

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