【ミチルのひとりごと】バレンタイン・ワイン

バレンタインと言うとチョコレートだが、チョコレートよりは、ワインのほうが好きな彼のために、家の近所にあるワイン専門店に初めて足を踏み入れた。シックで素敵な店構えのお店なのだが、ちょっと見るだけというには気遅れがするため、気になってはいたのだが、これまで入ったことがなかったお店。

自動ドアが開くと、こちらでは珍しく、すぐにボンジュールマダムと、明るい声で迎えられた。少し店内を見て回ったところで、何をお探しでしょうかと、30歳くらいの青年が声をかけてくれる。

自分は全くの下戸なので、ワインの知識は全くないのだが、バレンタインデーに、赤ワインの好きな彼に一本考えているのですが、お兄さんのお勧めは何でしょう? 確か、ボルドーもいいけど、でも確か他にも何かBで始まる有名なワインがありましたっけ?と訊ねると、彼は、「そうですか、では、ブルゴーニュでしょう。すぐに空けるワインをお探しですか、それともワインセラーでしばらく寝かせるためのストックワインでしょうか?」というのが彼の1番目の質問だった。

「ワインに目がないから、すぐに空けるでしょうね」というと、ご予算は?と聞かれる。だいたい、ワインの値段なんてピンキリで、まったく見当がつかないので、うーんと悩んでいると、お兄さんがすかさず、

これが一番のお勧めです」と持ってきたのがこのワイン。

 

これよりもっと安くていいのはありませんか? と思わず聞いてみると、お兄さんの顔色がなんと、みるみるうちに曇ってしまったではないか。

マダム、バレンタインデーは特別ですよ。これくらいは最低でも出さないと。

でも、そうですね、もう少し低い値段でとおっしゃるなら、としぶしぶ他にも2本程、お勧めを教えてくれた。でも、これらはセコンドですから。

セコンド?何それ?

セコンドと言うのは、同じ葡萄園でも、プルミエが一番味が良くて、値段も高いが、セコンドといって、2番目のものもあるらしい。だから名前がよく知られている有名な高いワインでも、セコンドなら、少しお手頃価格で変えると言う話だ。いろいろあるんですね、知りませんでした。

そうなんです。僕はこのビジネスに10年以上携わっていますが、まだ毎日ワインに付いて教えられることが一杯で、飽きることが在りません。ですから毎日、本当に楽しいです。他にもそのワインがどんな料理にあうとか、どれくらいの時間空けておけば一番飲み頃になるのか、など、いろいろと聞いた後、結局あまりにお兄さんが自信を持って進めるので、少しお高いが、最初に彼が手に取って勧めてくれたワインを買うことに決めた。

 

そして、レジカウンターで、包装してもらっている間、それにしても、この値段の差は一体どこからくるのか、ということについての話になった。すると彼は、舌に残る高貴な香りと複雑性、どれだけ複雑な味が出せるかがまったく違う、みたいなことを言う。飲めない私には、まったく理解のできない次元の違う話なのである。

もう一つ、とても面白い話を聞いた。10ユーロ以上するワインは、ワイン専門店で買うべきだと言うこと。僕も、スーパーで安いワインを買うけど、高いワインは絶対にスーパーマーケットで買うべきではないと。なぜなら、高級ワインにとって一番大切なのは、温度管理と保存方法。それが、スーパーマーケットでは、大量に仕入れるため、価格は安くなるが、売れるまでの保存状態が全く専門店とは異なっており、結局同じ高級ワインでも、スーパーで買うと、少し安いかもしれないが、劣化しているワインを買うことになるので、お得ではないと。そういえば、昔、スーパーで、高いワインを買ったのに、全く喜んでもらえなかったことがある。もしかしたら、もう美味しくなくなっていたのかもしれない。

その上、恐ろしいことに世界的なメガマートになると、インドネシアやブラジルのお店まで、船便輸送で3ヶ月かけて、旅をしたワインが、向こうで思うようにさばけなかった場合、ワインの最大の消費地であるヨーロッパにまた舞い戻ってくるのである。船で3ヶ月かけて。そんな亜熱帯の地域での販売ルートに載っていた上に、船で半年も旅をしたワインの味が落ちない筈はなく、高級ワインで知られるラベルの付いたワインが、お値打ち価格で販売されている時は、そういった裏があることもあるから、知っておいた方が良いよと、親切に教えてくれた。もちろん、これがワイン専門店のセールストークととられるかもしれないが、実際に彼が話している様子から、そんな風にも思えなかった。ただ、本当のワインラバーが、きちんと美味しいワインを飲んでほしいと言う、その熱意を感じた。

イタリア人の同僚に、毎日飲んでたら飲めるようになると言われて、ワインバーに付き合わされた時期が昔あったが、専門店でシラフで聞く話のほうが面白い。次からは、ワイン初心者の方も是非、ワイン専門店へどうぞ。