お米【ミチルのひとりごと】

私たちが引っ越してくる少し前に、この同じアパルトマンを購入したという若いベルギー人カップル。とても優しそうな(そして実際本当に優しい)ご主人と、ちょっと勝ち気な印象の奥さん。我々の上階に住む隣人である。隣人はとても重要だが選べないので、感じのよい隣人でよかったと助かっている。

そのご主人が、たまたま私が家に入ろうとしていた時に、階段を降りてきた。急いでいるようなので、ボンジュールと挨拶だけすると、彼が、ふと立ち止まり、「もしかして。。。お米はないでしょうか?」と私に聞くのだ。

お米?

金髪に鳶色の目をしたお隣のご主人から、お米はないかと聞かれて、私は一瞬絶句してしまった。これが、日本人かアジア人の隣人であれば、「ありますよ」とすぐに返事をして、あまり不思議にも思わなかったと思うのだが、残念ながら、私の堅い頭には、ベルギー人の彼らが、お米を切らして困っているという図がすぐに描けなかったのである。

もちろん、一瞬びっくりした顔を見せてはしまったが、その後すぐに

「ええ、ありますよ。どれくらい必要ですか?」

とフォローして、3合ほど差し上げたのだが、わたしがあんまり最初に「え?」という顔を見せてしまったせいか、お米を準備している間、「いや、やっぱりいいですよ。ごめんなさい、へんなことを聞いてしまって・・・。これから買いに行けば良いだけなので・・・」と彼はとても恐縮してしまっていた。

そして、しばらくしてコンコンとドアをノックする音が聞こえる。

ああ、お米が入っていた器を返してくれるのだろう、と思って開けると、やはりお隣のムッシューだった。しかし、お米はそのまま。

いぶかしがる私に、「これって、お寿司用のお米ですよね?実は、この特別なお米なら、うちにもまだ少しあったということを思い出しまして・・・。すみません、お気持ちだけで有難うございました」

実は、どうやら、彼はタイ米のようなお米を必要としていたらしい。

それにしても、ベルギー人のお隣さんが、お寿司を家でつくって食べていたことにもびっくりだが、お米の種類まで分かるなんて、昔に比べてアジア料理が欧州にとても浸透している気がする。

以前なら、ホームパーティーなど開くとき、日本人が作るお寿司というだけで、ありがたがられた気がするが、最近のベルギー人の日本食通は、生半可日本人より手強かったりするので、侮れない。この間は、ポーランド人に、ベルギーで「お好み焼き」が食べれる日本食レストランを教えてほしいと言われ、困った経験をした。

まあでも、この調子で、寿司だけでなく和食の世界進出が進んで行くのは、海外に住む日本人にとってはとても有り難いことである。やっぱり和食、ほっとしますよね。さあ、寒くなってきたし、今夜はお鍋にしようかな。

25.oct.2016