【ミチルのひとりごと】花火の思い出

7月21日、ベルギー建国記念日。ベルギーでは花火が上がる。花火と言えば、日本で隅田川の花火大会を思い出す。 

 

そもそも東京は人が多い。花火の会場はさらに混む。自分のペースではまっすぐ歩くことなどできない。あまりの人の多さに酔いそうになる。

その日は、当時お付き合いしていたボーイフレンドと二人で、隅田川の花火デートだった。慣れない浴衣と下駄を履き、屋台から流れてくる美味しそうな匂いに誘われて、よそ見ばかりしているので何度も転びそうになる。日本の花火はやはり美しい。世界で一番だと思うのは、日本の花火師が、美しさと儚さを表現しているからだと思う。

隅田川の豪華な打ち上げ花火を見終わって帰る途中、駅までの道の途中で事件は起こった。私のボーイフレンドは、あまりの人混みで逸れてはいけないと思ったか、後ろも振り返らずに、私の手を取って駆け出した。・・・と思いきや、びっくり。彼は、私の手ではなく、近くにいた別の女性の手を取って、ずんずんと先に進んで行くではないか。

情けないかな、その女性のボーイフレンドも、突然のことにあっけにとられ、ぼうっと私の顔と彼らを交互に見ているだけ。しかし、間違われた女性も女性である。すぐに手を振りほどいて「離して下さい!」とでも叫んでくれればいいものを、なにやら嬉しげに私のボーイフレンドの後ろを大人しく引っ張られるままに、ついて行っているではないか。

もちろん、まったくの勘違いであったから、追いついた私たちに彼が謝って事なきを得たものの、短い時間ではあったが、人混みを抜けようと、彼が全く別の女性の手を一生懸命引いていたあの場面と、その後のばつの悪そうな彼の表情は、なぜか最も印象深く美しいはずの花火よりも、記憶に残っている。

ベルギーだと花火でも人混みなんて、東京のそれと比べるとたかが知れていて、あんな間違いは起こるはずもないと分かっているのだが、「花火」と聞くと私が思い出すのは、この少し甘酸っぱい出来事なのである。